聖徳太子建立の四天王寺。
JR天王寺駅近くに佇む四天王寺の西の方角、石の鳥居近くに引導石と呼ばれる聖石があります。会社において上司から肩を叩かれ、引導を渡されることも珍しくない昨今、この「引導」という言葉に妙に敏感に反応してしまうのです(笑)
四天王寺の引導石。
引導とは、葬式の時に死者が迷わぬように僧が法語を与えることを意味します。死者を仏の世界に導く引導。成仏させるためにお経を読み、法語を与えて行くべき道を教えます。
「誘引開導」が元になっている引導。
仏の道に誘い、道を開いてくれるという、実に有り難い行為が引導なのです。現代社会の中では、いかにも最後通告のような形で使われる言葉ですが、本来はむしろ ”渡されたい” のが引導なのです。
四天王寺学園の南方、境内の西方に位置する石の鳥居。
昭和9年に重要文化財に指定されている由緒ある鳥居です。
冒頭の引導石は、石の鳥居をくぐってすぐ右側にあります。
引導石の案内板が見えて参りました。
ぱっと見では五輪塔のようなものが引導石かと思われたのですが、案内板の向こう側に隠れているのが引導石でした。
四天王寺は日本仏法最初の官寺として、諸宗派にはこだわらない全仏教的な観点から和宗総本山として独立しています。なるほど、それで阿弥陀様の浄土信仰とも結び付いているのですね。
仁王門、五重塔、金堂、講堂が南北一直線に並ぶ四天王寺式伽藍配置。
拝観料の300円を払って、中心伽藍の中へ入ります。
これが世に言う四天王寺式伽藍配置。
しっかりと目に焼き付けておきました。
引導石の説明書き。
以下に引用させて頂きます。
諸人葬送の時に棺を引導石の前に置き、無常院(北引導鐘堂)の鐘を三度鳴らすと、お太子様がこの石に影向ありて亡魂を極楽浄土の世界にお導きくださるという伝説があり、太子信仰と浄土信仰を結ぶ重要な霊石となっている。
聖徳太子が引導石に現れる。
何やらそれだけで、神妙な気持ちになります。あの世の世界の極楽浄土に、聖徳太子が一役買っている。引導石は実に有り難い、霊験あらたかな霊石なのです。
四天王寺を訪れてみて、改めて大阪観光がバラエティに富んでいることを感じます。キタの梅田にミナミの難波、それに日本一の高さを誇るビルのオープンが待ち遠しいあべのハルカスを抱える天王寺界隈。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのハロウィーンでは、毎年夜になるとゾンビがパーク内を徘徊しますが、それこそあの恐ろしいゾンビに引導を渡してあげたいものです(笑)
引導石の脇にある聖徳太子影向引導の鐘。
この鐘を三度鳴らせば、極楽浄土の世界へと誘われるのでしょうか。東西南北の西の方角には、太陽が沈みゆく葬送のイメージが重なります。
京都の葬送の地として知られる六道の辻も、清水寺の西方に位置しています。大和の西にそびえる二上山の頂上付近には大津皇子の墓があると言われます。
玉垣に囲まれた引導石。
四天王寺には引導石も含めた四石(しせき)と呼ばれる聖石が鎮まります。中心伽藍の金堂前にある転法輪石、南の方角に熊野遥拝石、そして東には伊勢遥拝石があります。
ここ四天王寺の地においても、伊勢と熊野は崇拝の対象になっていたようです。
四天王寺の山号は荒陵山(あらはかさん)と言います。
果たしてこの地は人が葬られていた跡地なのでしょうか?山号に陵(みささぎ)の文字が入っているのは気になるところです。
◇熊野権現礼拝石 四天王寺四石の一つ、聖地熊野への遥拝所をご案内!